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  • 【科学】「1日の長さ」は本当は一定ではない――地球の中心で綱引きする力が、自転速度の変動を左右していた

    私たちが当たり前のように思っている「1日24時間」は、実はミリ秒単位で揺らいでいる。特に数十年という長い周期で生じるこの揺らぎには、地表からは決して直接見ることのできない、地球の中心にある固体の「内核」とマントルの力関係が深く関わっていることが、カナダ・アルバータ大学の研究チームによるモデル解析で示された。GPSなどの衛星測位や国際的な標準時刻の管理を支える精密な地球回転の把握は、この見えない地球内部の”綱引き”と無縁ではない。

    地球の自転を左右する「綱引き」

    アルバータ大学物理学科のホイフェン・チャン氏とマチュー・デュンベリー氏は、1964年から2019年までの地球の自転速度データと、地震学的研究から推定された内核の回転履歴、外核の流れのモデルを組み合わせて解析した。その結果、約60〜70年周期で生じる「1日の長さ」の変動(振幅にして数ミリ秒程度)は、内核の重力トルクを主な駆動要因とするモデルでよく説明できることを示した。論文は2026年9月23日付の学術誌ネイチャーに掲載された。

    地球内部では、マントルの奥、深さ約5000kmのところに半径およそ1220kmの固体鉄の「内核」があり、その外側を液体の「外核」が包んでいる(内核と外核を合わせた”核”全体としては火星に近い大きさになる)。研究チームによれば、内核の形状や質量分布のわずかな偏りが、マントル内部の重い部分との位置関係によって重力トルクを生み、これが内核とマントル全体の回転速度を変化させる主な要因になっているという。

    地球の中心で綱引きする3つの力(重力トルク・電磁トルク・地形トルク)の模式図
    出典: Zhang & Dumberry, Nature(2026)のデータをもとに作成

    見えない”核”の動きが、地球回転の把握に関わる

    この重力トルクに対しては、外核の流れがCMB(核・マントル境界)の凹凸と相互作用する地形トルクや、外核の流れが地球磁場を介してマントル最下部の導電層と結びつく電磁トルクが”ブレーキ”として働き、変動を抑えている。モデルによれば、重力トルクの強さは推定0.6〜4.2×10の19乗ニュートンメートル、内核はマントルに対して東向きに年0.12度の差動回転を続けているという。いずれも直接測定値ではなく、自転速度のデータからモデルを介して導き出された推定値である点には注意したい。

    先行する地震学的研究によれば、内核はマントルより速く回っていた状態から、2010年頃を境に遅く回る状態へ切り替わったとみられる――今回の研究はこの知見をモデルに組み込んでいる

    地球の自転速度の変動は、精密な地球回転の観測・予測や、世界の標準時(協定世界時)を維持する「うるう秒」運用とも関わる要素だ。近年は地球の自転がわずかに速まる傾向もあり、うるう秒の運用見直しが国際的に議論されている。今回の研究は、地表で観測できる自転のわずかな変化と、直接観測できない地球中心部の物理モデルを結び付ける手がかりを与えるものだ。

    内核は掘削して直接調べられない場所にあり、地震波の伝わり方などの間接的な手法でしか性質を知ることができない。研究チーム自身、結果は内核・外核モデルの精度に左右される部分が残るとも認めている。それでも、「1日の長さ」という身近な指標から地球深部の物理モデルを検証する今回の手法は、内部を探る新たな手がかりとして注目される。

    出典: Zhang, H. & Dumberry, M. “Gravitational torque drives multidecadal variations in length of day.” Nature 658, 119–124 (2026)、Nature News & Views 解説記事、ScienceDaily

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