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  • 【科学】理研、アト秒レーザーの集光強度を100倍に――電子の動きを”見る”だけでなく”使う”時代へ、次世代デバイス開発にも道

    理化学研究所(理研)のチームが、100京分の1秒という極めて短い光のパルス「アト秒レーザー」を、1マイクロメートルに満たない極小の点に、従来の100倍以上の強さで集めることに成功した。研究チームはこの成果を、物質中の電子の動きを「観測する」研究から、その動きを「変化させて利用する」研究への拡張と位置づけている。将来的には、材料をナノスケールで加工する技術や、次世代の電子デバイス・新素材の研究にもつながりうる基礎技術だ。

    「アト秒科学」とは何か

    アト秒(as)は100京分の1秒(10のマイナス18乗秒)という、人間の感覚では想像しづらい時間の単位だ。原子の中を電子が動く時間はこのアト秒スケールにあり、その一瞬を切り取って観測する技術は2023年のノーベル物理学賞の対象にもなった。理研が今回生み出したのは、レーザー光から高次高調波発生という現象を経て取り出した「孤立アト秒パルス」。今回の成果は、このパルスを「観測」の道具から「加工・制御」にも使える道具へと広げるための、集光技術の大幅な底上げにあたる。

    従来比100倍以上、卓上型として世界最高水準

    理研光量子工学研究センターの今坂光太郎基礎科学特別研究員らのチームは、表面粗さをサブナノメートル級(約0.892nm)まで抑えた高精度な楕円面の多層膜ミラーを新たに開発し、焦点位置をリアルタイムで安定させる仕組みと組み合わせた。この結果、水平460±130ナノメートル、垂直360±120ナノメートルという1マイクロメートル未満のスポットへの集光に成功し、パルスのピーク時には1平方センチメートルあたり3.0×10の15乗ワット(3,000兆ワット)という光のパワーが集中した。これはテーブルトップ型光源による孤立アト秒パルスのピーク強度として世界最高値で、従来のテーブルトップ型光源と比べて100倍以上の値だという。

    研究チームは、この成果を「電子の動きを”観測する”研究から、電子の動きを”変化させて利用する”新しい超高速・高強度光科学への道を開くもの」と位置づけている。

    成果を裏付ける形で、国際的な研究広報サービスのEurekAlert(米国科学振興協会運営)も同時期にこの研究を紹介し、パルスのピークパワーが1.1ギガワットに達したことを伝えている。同誌によれば、手法を煮詰めれば理論上は1平方センチメートルあたり2.6×10の16乗ワット(今回の約8.7倍)まで強度を高められると試算されているという。ただしこれはあくまで将来の見積もりだ。研究成果は学術誌「Ultrafast Science」に2026年9月23日付でオンライン掲載された。

    何の役に立つのか

    光を強くすると、物質の光への応答が単純な比例関係ではなくなり、通常とは異なる現象が現れる。これが「非線形光学」と呼ばれる領域だ。強度と集光精度が上がったことで、この現象をアト秒スケールで起こす「非線形アト秒光学」の実験が、気体だけでなく固体・液体などの凝縮系物質でも可能になる。研究チームは、材料表面のナノ加工や、凝縮系物質中の超高速な電子の動きの研究に道を開くとしており、将来的には電子材料・デバイス研究への波及も期待される。ただし現時点はあくまで基礎研究の段階であり、製品・産業応用にはさらなる研究開発が必要となる。

    アト秒レーザーの集光強度:現在の到達点と将来の目標を示す棒グラフ
    出典: 理化学研究所プレスリリース、EurekAlertのデータをもとに作成

    出典: 理化学研究所 プレスリリース、EurekAlert!(米国科学振興協会)、Ultrafast Science誌 掲載論文

    論文情報:Imasaka, K. ら, “Submicrometer Focusing of Isolated Attosecond XUV Pulses Approaching 1016 W/cm2”, Ultrafast Science (2026), DOI: 10.34133/ultrafastscience.0198

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